2024年1月27日土曜日、バケモノの子 大阪公演、ソワレに夫婦で行ってまいりました。
この演目を観るのは初めてです。
結論から申し上げると、つまらなかったです。
長かったです。
疲れました。
何がつまらないって、作品そのものがです。
出演者は関係ありません。
だから今回はただただ、作品についての思いを綴ります。
予約段階で期待値ゼロ
もともとこのミュージカルについては期待値ゼロでした。
なぜかというと、「バケモノの子」を劇団四季がミュージカル化することになった際、テレビでアニメ映画の放送があり、興味半分でどんな話なのかと見てみたのですが、何だかあまりおもしろくなくて、家で見ているということもあり、集中力が保てず途中でギブアップ。
後日途中から観ようと録画を残しておいたのですが、再生ボタンをもう一度押すことはありませんでした。
そして続きを見ることなく、消去。
まあ、最終的には主人公の男の子が強く、逞しくなって終わるんだろうなって、何となく想像はできましたけど。
ふーん、この映画を劇団四季がミュージカル化するのね。
ウィッグとかメイク、大体想像つくわ。
パペットワークとか派手にやるんだろうな、大体想像つくわ。
そんな感じでした。
チケット代は「オペラ座の怪人」と同じ価格設定。
高いなぁ…
行くかどうか悩みましたね。
映画はつまらなかったし、でも、新作オリジナルか……ネット上の評判はイマイチ。
本当に金額に見合うものを提供してくれるのだろうか……
そんなことを考えつつも、”見てもないのにつべこべ言うな”が我々のスタンス。
実際この目で見なければ、モノ申す権利はありません。
ですから取りあえず今回は、珍しく一番安いC席を予約することにしました。
金額は5000円×二人で10000円。
この金額なら、つまらなかったとしても妥協できます。
取れた座席はK列14・15番。
二階席センターブロック、一番後ろから3、4列目くらいです。
一度観て、もし素晴らしければ、もう一度行けばいいと思ってました。
想像通りの舞台
心待ちにすることもなく、全くテンションの上がらないまま観劇日を迎えました。
我々は二階席センターブロックの後方ですから、舞台だけでなく、劇場全体や客席もある程度見えてしまいます。
土曜日の夕方だというのに空席が目立つ、というより、二階前方サイドブロックは、ほぼ空席。
なぜだか我々が座っている一番安いC席のエリアだけは埋まってました。
みんな考えることは同じなのかもしれませんね。
お客さんは正直だ。
で、肝心の感想ですが、映画を観て「多分劇団四季はこんな感じでミュージカルにするんだろうな」って想像しましたが、その想像通りです。
勘違いしないでくださいね。
全体的には非常によくできていると思います。
少なくとも、「ロボット・イン・ザ・ガーデン」なんかより、はるかによくできてます。
技術も、美術も、舞台展開、運び、振付や音楽も結構いいんです。
ロボ庭や新BBみたいな安っぽさもありません。
でも……つまらないんです。
何がつまらないって、話が。
映画を途中でギブアップしていたこともあり、あらためてどんなお話なのかも含めて観劇したわけですが、正直「バケモノの子」の世界観が全く理解できませんた。
調べたところ、全て原作の問題だと思いますが、その原作を選んで舞台化したのは劇団四季ですからね。なぜこの話を選んだのか、皆目分かりません。
ただの物語・フィクション・ファンタジーだとさんざん心に言い聞かせながら見ても、この話の世界観は意味不明です。
以下、観ていて感じたことです。
・「バケモノ界」ってどこにあるの?
・普通に行き来してるみたいですけど、人間界とバケモノ界の境界線はどこですか?
・そもそも「バケモノ」って何ですか?
見た目は人間と動物のミックスみたいですけど、豚だったり猪だったり、熊だったり猿だったり、動物に統一感がなくて意味が分からないです。
・人間の心には闇があると言いますけど、バケモノの心には闇がないんですか?それってバケモノのほうが心が尊いっていう設定ですか。
・宗師が、次の宗師は猪王山と熊徹のどちらかだと最初から決めていた理由は何なんですか。
・なぜチャンバラばかり毎日稽古しているのか意味がわかりません。どうやって生計を立てているのでしょうか。飲食店や医者は僧侶は普通にバケモノ界にも存在するようですけど、熊徹や猪王山のご職業は?二人ともチャンバラ道場の先生ってことですか?
・9年の時を経ても、結局チャンバラ対決で宗師が決まるんですか?それならバケモノ界全員でトーナメント戦やったらいいんじゃないでしょうか。
・宗師さんは、なぜ神になる権利を熊徹に譲るんでしょう。どういうシステムですか?100年に一度とか言いながら、神って誰でもなれるんですね。
・蓮のお父さんって、息子が行方不明のままで何年もほったらかしてたみたいですけど、捜索願とか出さなかったんですか?「これまでめっちゃ息子を探してました」的なセリフを一言でもいいので入れたほうがいいと思います。長年探しもせずに息子が訪ねてきたら「これまでの埋め合わせをしたい」とか必死で言っていて、人物像がめちゃくちゃです。
・小説「白鯨」を入れ込んで、後半あそこまで鯨を絡めてくるなら、もうちょっと白鯨とこの物語をどう繋げたいのか説明があったほうがいいと思います。観劇している人全員が「白鯨」の小説を、もしくは「バケモノの子」の原作を知っている前提で話を進めているようで、かなり無理があります。原作にも白鯨は出てきているみたいですが、「自分と闘う」ということだけを表現するために、白鯨って必要ですか。映画なら映像を、舞台であれば舞台美術を、ただ派手に見せたいがためのこじつけで白鯨を入れ込んでいるふうに見えてしまいます。
・一郎彦が渋谷で刀を持って暴れるところ、その姿は通り魔を彷彿とさせるものでしたが、警察官がそばにいるにもかかわらず、取り押さえもせずに逃げてしまったのにはビックリしました。
・最後のほう、楓は一切の驚きも抵抗もなく、自然にバケモノ界に馴染んでいたことに違和感がありました。
・蓮のお母さんのナンバー、高音過ぎて俳優さん大分キツそうでした。俳優の力量もあるかもしれませんが、無駄にキー高すぎませんか?
・闘いのシーンが長すぎる。尺取り過ぎです。もっと短くして、上演時間縮めてください。演じてる方は頑張ってますが、見ている方ははっきり言って退屈です。
・最後のシーンあたりに出来ていたシャボン玉も、意味が分からないです。
などなど、もう言い出したらキリがないです。
初見の観客にここまで感じさせるって、制作側は作ってる段階で想定できなかったんですかね。
ホント、全く感情移入できず、子供向けなのか大人向けなのかもよく分からないし、ファミリーで楽しめるかっていうとそうでもないし、何なんでしょう。
ちなみに観客の中に子供はほとんどいなかったです。
ライオンキングのように普遍的なテーマを描きたいのかもしれませんが、設定に無理がありすぎます。
まとめ
故・浅利慶太氏は、作品の出来は「本が7割」とよくおっしゃってました。
「本」が悪いと、作る側がどんなに頑張ってもこのような作品になってしまうのだろうと、それに尽きます。
何だかいろいろと、とっ散らかってます。
本日の出演者を見ると、熊徹の名前が一番に記載されていますが、この作品の主役は熊徹なんでしょうか。
蓮と熊徹二人が主役と考えても、この二人の関係がそこまで胸にグッとこないんです。
一郎彦も、いきなり暴れ出した感が強いです。
そして、魅力的なヒロインが作品の中にいないというのは、ミュージカルとしては致命的です。
楓がヒロインでは弱すぎます。
ロイドウェーバーの素晴らしい音楽が聴けるのならまだしも、結局この作品って、誰に何を訴えたいんですか。
観た人に何を感じてほしいんですか。
それすらよく分からなかったです。
劇団四季はオリジナルミュージカルを制作するにあたり、なぜこの作品を選んだんでしょうか。
何か大人の事情で特別な力でも働いたんでしょうか。
強いて言うなら、「ライオンキング」や「美女と野獣」「キャッツ」や「アナと雪の女王」等の作品を上演することによって劇団四季が得た美術・技術的なノウハウを駆使・披露するのに都合がいい作品だったから、というくらいですかね。
商業演劇として成立させたいというのは分かるのですが、観客としては、豪華舞台装置やパペットワークの妙を目当てに劇場に行っているわけではありません。
せっかくお金と時間と労力をかけるのであれば、もっと考えてほしいです。
視点を変えて、例えば「コーラスライン」「ジーザス・クライスト・スーパースター」のように、ロイヤリティは別として、そこまでハード面でお金はかかっていなくても、音楽・演出、俳優の演技・歌唱・ダンスなど、ソフト面を重視した作品だってつくれると思うんです。
最近テレビで劇団四季の作品のPR番組やニュースを見ると、出演俳優が出てきたと思いきや、舞台装置や衣装、開口法の説明をするか、子役オーディションの話ばっかりで、正直うんざりしてます。
そういうところ、方向性が間違っている気がします。
浅利氏の時代の作品PR番組って、例えば出演俳優のお稽古そのものにもスポットを当て、苦悩や努力が垣間見えたりして、もっと見応えがあったんんですけどね。
今回、俳優さんの演技や歌について全く触れなかったのは、誰の歌がどうとか、演技がどうとか言う以前の問題だからです。
むしろ、俳優というお仕事は大変だなぁと同情すら感じてしまいました。
ベテランであろうが、新人であろうが、俳優も一人の人間ですから、心の中では「この作品、つまらないな」って思いながら出演されている方も、絶対にいると思うのです。
食べていくには自分の出たい作品だけに出るというわけにいきませんし、キャスティングされた以上、プロとしていい加減なことはできませんから、まさに”俳優はつらいよ”です。
2023年12月から2024年5月までの上演期間ですが、1月の週末でも空席だらけなのに、5月まで毎日大変ですね。
一生懸命取り組まなくてはならない俳優さんが本当に気の毒です。
我々としては、この作品を観に劇場へ足を運ぶのは、今回が最初で最後です。
感想は観てから言いましょう!!!
C席おススメです。
まだの方は是非ご覧になってください。