劇団四季 ノートルダムの鐘 2023.4.8 感想 ☆ 寺元健一郎カジモド 野中万寿夫フロロー 松山育恵エスメラルダ 加藤迪フィーバス

観劇・映画鑑賞レポ

「ノートルダムの鐘」京都公演に
行ってきました。

感想の前に
関西圏に住む
ミュージカルファンとして
ひとこと言わせてください。

関西に初めて
この演目が来たのは、2017年。
その次が2019年。
そして今回2022年~2023年で
3度目のノートルダムです。
すべて京都劇場です。
昔と違って、
関西に来る公演、
超偏ってますよね。
最近、海外ものの新大作は、
めっきり東京でしか
やらなくなりました。
劇団四季も相当、
金欠なんですかね。
美女と野獣を
東京・大阪同時に開幕した
浅利慶太氏全盛期が懐かしいです。
そろそろアラジン来いよ~!
アナ雪やれよ~!と、
思っている四季ファンの方も、
たくさんいらっしゃるはず。

アラジンなんて、
「日本全国の皆さん、
アラジンはずっと東京でやってるから、
観たかったら東京に来てくださ~い」
ってな勢いで、
延々と東京でやってます。

オペラ座の怪人だって、
この10年の間に
大阪⇒京都⇒大阪と、
3回も関西に来ています。
好きだけど、
他の演目もやってよ~って感じです。

大阪四季劇場だって、
今やっている
オペラ座の怪人が終わった後は
「バケモノの子」。
バケモノやるくらいなら、
ずっとファントムやっててください。
オリジナルが好きな方も
いらっしゃるかとは思うのですが、
我々はオリジナル作品に
ハマったことがなく、
観てもせいぜい1回です。
ロボ庭京都公演もとりあえず行きましたけど、
別に見なくてもよかったなって感じでした。
正直、オリジナルは全国巡回公演で充分。
同じ場所で長々ロングランされても、
よほど四季が好きな方や、
特定の俳優の大ファンでもない限り、
複数回通ったりすることはありません。
チケット代と作品のクオリティが
見合ってないです。
オリジナルミュージカルは、
莫大なロイヤリティがかからず、
劇団側としては
やりたくて仕方がないんでしょうけどね。

上演権の安いノートルダムは、
10年待たずして3回も京都に……

低コストで上演可能な
リトルマーメイドは
3年間も大阪四季劇場でロングラン……

大人の事情が垣間見え過ぎて
ちょっと冷めます。

それでも、
「ノートルダムの鐘」自体は、
素晴らしい作品ですので、
良しとしましょう。

では感想へ。


こちらが今回のキャストです。
いままで観たことがないキャストばかりだったので
ラッキーでした。

カジモド 寺元健一郎さん

寺元健一郎さんを
四季のステージで拝見するのは、
今回が初でした。
「貴婦人の訪問」や
「ジキルとハイド」
「モーツアルト!」では
観たことがあったんですけどね。
童顔でとてもお若く見えますが、
私が観た時点で37歳。
もうアラフォーなんですよね。
舞台俳優としても
活動歴は長い方です。
35歳の飯田達郎さんより、
若く見えます。

カジモド役、素晴らしかったです。
なんともいえない
可愛さを感じるカジモド。
セリフにもありますが、
フロローがカジモドのことを
時には愛おしい、
息子のようだと感じることが
本当にあったのではないかと
思わせるカジモドでした。
フロローが野中さんだったので
余計にそう感じたのかもしれません。
飯田×芝コンビで見たときより、
二人の関係に
愛情とか、憎悪とか、
そんな言葉だけでは割り切れない、
もっと複雑で特別な何かを感じました。

飯田カジモドの時は、
なぜエスメラルダは
わざわざカジモドに謝るためだけに
教会に探しにやってきたのだろうと
思ってしまいましたが、
寺元カジモドは、
エスメラルダが思わずそうしてしまう、
放っとけなさを感じるのです。
”彼を傷つけたくない”と感じさせる、
限りない純粋さのようなもの。
サンクチュアリ=聖域という言葉が
何度もこの作品に出てきますが、
寺元カジモドについては、
彼そのものが聖域なのかなって
感じてしまいました。

だから、
フロロー×カジモド、
エスメラルダ×カジモド、
フィーバス×カジモド、
石たち×カジモド、
それぞれの関係も、
より意味のあるものに感じられ、
とても心が動かされました。

寺元さんが本来持っている魅力なのか
観客がそう感じるように演じているのかは
わかりません。
でも、彼の存在のおかげで
作品に深みが出ていたような気がします。

この方が劇団四季に入って、
カジモド役を得て、
カジモド役で舞台に立たれて、
本当によかったと思います。
東宝の作品に出られている時は、
ここまでガッツリ歌っているところを
観たことがなかったので、
こんなにしっかり歌える方なのだと
実感する機会がなかったのですが、
2幕のカジモドの
叫ぶような、
訴えるような歌声には
胸が締め付けられるほど
感動しました。


今は退団された
阿部よしつぐさんもそうでしたが、
四季のメソッドに染まっておらず、
かつ、力のある俳優さんが、
劇団四季に入って活躍されるのは
劇団四季にとっても、
とても良いことだと思います。
東宝などのミュージカルでは
なかなか役を得られず、
アンサンブルや端役で、
力を思う存分発揮できていない
実力のある俳優さんが
山ほどいますから。
数年でもいいので
比較的チャンスが得られやすい
劇団四季で活躍し、
四季にも新しい外の風を
吹き込んでほしいです。

これからのご活躍も楽しみにしています。

フロロー 野中万寿夫さん

野中さんのフロロー、好きです。
ひたすら教えの通り、
正しくありたいのに
そうなれないフロローの
ひとりよがりな、
愚かともいえる苦悩が
本当によく伝わりました。
時には人から崇められる
”聖職者”という立場ですが、
当の本人は
欲望や煩悩に打ち勝てるほどの
人生経験すら持ち合わせていない、
とっても不幸な境遇ですよね。
この作品の登場人物で一番不幸なのは
フロローだなって思います。
実社会でも、似たような人、
たくさんいますよね。

芝フロローの時は
そんな風に感じなかったんです。
bunが想う
芝さんのイメージって
フローローではないです。
芝ジーザスや芝杉本を観た時も
同じ気持ちになりました。
ジーザスなんて、
キャスティングされた時点で
「オイオイ、違うだろ~」って
思ってしまいました。
芝さんが下手とか、
そういう話ではなくて、
キャラが違うなって思うんです。
芝さんはじっとしていても
個性が溢れてしまうタイプの
俳優さんです。
自由奔放な役だったり、
一癖二癖ある役がお上手。
歌声にもそれが表れています。
そんな芝さんの持ち味が
活かされる役って、
もっと他にあると思うんです。
芝さんが演じるフロローは…
ごめんなさい。
何かと職権濫用している
エロオヤジとまではいかなくても、
「それなりにこれまで
好き勝手やってきたんじゃないの?」
ってどこか感じさせてしまうんです。
ひたすら教えの通りに生きようと
ひたむきに苦悩しながら生きてきたようには
見えないです。

野中さんは、
自身の個性を削ぎ落として
ただただまっすぐに
フロローを演じられているからか、
欲望をすべて封印し生きてきたフロローを
見事に表現されていると思うのです。
だから、イヤだなって感じながらも、
どこか憎めなかったです。
この人はこの人で、
狭い視野の中で
懸命に生きてきたのだろうと感じてしまう。
エスメラルダを追い詰めるのも、
そうするしか彼にはできなかったのだろうと、
憐れに思いました。

フロローは終始
自分が一番尊く、正しく、
清らかなのだというスタンスで振舞いますが、
客席から見ていると、
この作品の登場人物で
一番愚かに見えました。


信仰って、怖いな~って感じました。

ここまでの感想を持てたのは
野中フロローが
素晴らしかった証拠だと思います。

エスメラルダ 松山育恵さん

うーん、松山さん。
キャッツのディミータ役で
観たことがあったのですが、
何と言えばいいのでしょう。
rin曰く
「前観たエスメラルダより、
だいぶ見劣りするなあ……」

ちなみに、前観たのは岡村美南さん。
初演キャストは、
岡村美南さん・宮田愛さんでした。
この二人は、かなりスタイルが良くて、
舞台映えしますから、
仕方のないことかもしれません。

1幕でエスメラルダが登場して、
ダンスを披露している時、
カジモド・フロロー・フィーバスの
3人の男どもの心を
わしづかみにする瞬間があり、
一瞬時が止まったかのような演出が
施されていますが、
エスメラルダ役の俳優に
周囲とは一線を画した美しさがないと、
このシーン、厳しいですね。
今回はちょっと違和感を感じました。

歌や演技も、棒な感じが何度もしました。
棒だからこそ
セリフがまっすぐに心に伝わった瞬間も、
あったことにはあったのですが、
劇団四季にありがちな、
ダンス枠の人間が、
頑張ってソロを歌っている感が
メチャクチャします。


彼女のナンバー「いつか」の歌詞に
“いつか人がみんな賢くなって……”
というフレーズがりますが、
そんなセリフを口にするような
芯のある理知的な女性に
あまり見えないというのが
正直な感想です。
どちらかというと
野生の直感で動くタイプの
女性に見えました。

彼女は2018年から
この役を演じていらっしゃるようですので、
かれこれ5年ですよね。
うーん、
個人的な好みもあると思いますが、
もう少し、演じ込んでる感がほしいです。
「まだ役に慣れてないの?」って
思うようなセリフ回しもあって、
よく言えばフレッシュ。
悪く言えば、未熟な感じ。

結論としては、
3人の男の人生を
一瞬にして狂わす女性としては
どうにも物足らないです。

フィーバス 加藤迪さん

役の感想じゃなくてごめんなさい。
でも言わせてください。
カッコイイです!!!
この方って
こんなにカッコよかったですか???
今ノリにノってる俳優さんの一人でしょう。

前回の大阪キャッツでは、
上演期間中4回ほど足を運び、
マンカストラップは4回とも全部彼でした。
イケメンの印象は全くなかったのです。
特に注目もしたことがありませんでした。
だから、彼がオペラ座の怪人で
ラウル役に登板した時、
「え??そこまで男前じゃないのに、
キャラが違くない??」
とか思っていたのですが、
その思いを見事に裏切り、
実際の彼のラウルは、
歌も演技もお姿も、
とても素敵でした。
これまでになかった感じのラウルでしたが、
女子がキュンとなるラウルでした。
ススムラウルを観た友人が
その日からススムファンになりました。


そして、今回フィーバスの彼。
めちゃカッコイイです。
もともとが爽やかで
清潔感たっぷりな感じの方なので、
泥臭さが少ないといった点では、
フィーバスという役柄としては
ワイルドさが少し足らないかもしれませんが、
カッコイイことには間違いありません。
客席にも、
彼を目当てで来ているだろう女性客、
たくさんおりました。
そんな女性ファンたちの黄色い声を受けて、
日々カッコよさが増している感じ。

そういうノリにノってる時期って、
役者本人も輝いてますよね。
勢いを感じるんです。
キャストの中でも、

謎の光を放っていましたwww。
現在女性ファン急増中っていうのが、
伝わってきました。


今後、どんな役を演じるのか
非常に楽しみですね。
キャッツはマンカスを卒業して、
ちょっと悪い感じの役にも挑戦してほしいので
セクシーさを身につけて、
タガーなんてどうでしょう。
W.S.S.のトニーもいいんじゃないですか。
歌えるイケメン枠、
総ナメにしちゃってください。
特段ススムファンという訳ではありませんが、
勢いのある俳優さんは、
見ていて無条件に楽しいので、
応援しています。

まとめ

本作のアンサンブルは、
アンサンブルと言えども、
かなり高い歌唱力が
要求されるなって思いながら
いつも見ています。
今回のアンサンブルも
こないだフィルマン役で観たばかりの
イケオジの平良公一さん、
(↑平良さん個人的にめちゃ好きです。)
クリスにキャスティングされている
岩城あさみさん、
アナ役を演じている
町島智子さん、と
錚々たる顔ぶれです。
贅沢でした。

千秋楽前日ということもあって、
チケットは完売、
劇場は熱いファンで満席でした。

いろいろな方の感想に目をやると、
本作は暗い話で
舞台装置や美術も地味なので
好きではないという方も
中にはいらっしゃいますが、
シンプルで、無駄のない、
すごく趣味のいいセットだと
我々は思います。
衣装も悪くありません。
音楽も構成も素晴らしいです。

「ノートルダムの鐘」のような、
深掘りが楽しい
心にずっしりと響く
大人のミュージカル、
もっと増やしてほしいです。

これからも大切に上演し続けてほしいです。

マゼンタというか、スカーレットピンクというか、このシートの色が、
京都劇場に来たなって思わせてくれて、結構好き。
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