劇団四季 オペラ座の怪人 2023.2.11 感想 ☆ 佐野正幸ファントム 藤原遥香クリスティーヌ 岸佳宏ラウル

観劇・映画鑑賞レポ

昨年3月開幕した大阪公演。
2月11日に
今回の大阪公演で
3回目のオペラ座の怪人を
観てきました。

オペラ座の怪人は、
1988年初演の
市村ファントム、
野村クリス、山口ラウルの頃から
数えきれないほど見ています。

実はこの作品、
以前はそんなに好きではありませんでした。
好きじゃないのになぜ数えきれないほど観ているのか、
それは、やはりロイドウェーバーの音楽が
素晴らしいからです。
では、何が気に入らなかったのかと言いますと、
ズバリ、
”クリスティーヌが
何を考えているかわからないから
イライラする。”

この作品を好きになれない理由は
まさにこの一言に尽きました。

しかし!!
2020年に大きな演出変更が施されたことにより、
本当に素晴らしく生まれ変わっています。
演出変更後から、
大好きな作品になりました。


そして、劇団四季には珍しく、
ひとつの役に対しての
演者の年齢層が広く、
俳優がそれぞれの個性をもって
豊かに演じられるようになり、
毎回印象が大きく異なるため、
何度見ても飽きないのです。
こうなると、
リピート作品として最強です。

今回は2列目で観劇。

※以降、記載されている俳優さんの年齢は
2023年2月12日時点のものです。

2列目、近すぎる( ;∀;)

オペラ座の怪人 佐野正幸さん

佐野さんが演じるとわかった
その週のキャスティング発表の月曜日、
実はがっかりしていました😔
15年以上前から佐野ファントムは
何度も見ていますし、
前回と前々回、
清水大星ファントムを見て、
若く、声量も感情表現も豊かな、
これまでにない新しいファントムに、
💛💛💛になってしまったので、
佐野さんの登板には
正直「またか……」と、
見飽きた感があったのです。

でも、佐野さん、良かったです。
これまで見てきた佐野ファントムとは
演技が違っていました。
現在60歳の還暦ファントムですから、
36歳の清水大星ファントムとは
全くの別物です。
声の伸びや声量は、
どうしても若い俳優に叶いませんが、
ベテランの
佐野さんならではのファントムを
新しく作りあげられたんだなって
感じました。
演出変更前に観た
2017年の京都公演より、
めちゃくちゃバケモノ感が強くなっていて、
結構キモいです。

誉め言葉です。
今回2列目で観たので、
よけいにキモさが伝わってきました。
外面も、内面も、醜い!!
ひねくれて、
こじれまくった人生を
佐野ファントムには感じました。

だからこそクリスティーヌの
♪悲しみに満ち溢れて、憧れを宿していた♪
♪絶望に生きた憐れなあなた♪
といったファントムを想って歌う歌詞が
グッときました。

最近若いファントムが台頭してきて、
その面々の凄まじい声量に、
本来のストーリーを
忘れかけていましたが、
ファントムは本来、
クリスにとって
父の面影を
合わせもっているべきだと思うので、
演じる俳優も、
ある程度の年齢は
必要なのかもしれません。
そのあたりをちゃんと表現できているのは
佐野さんだなと痛感しました。
物語は大切にしなければ、と
思い出しました。

勝手に敬遠してましたが、
一見の価値ありです。

クリスティーヌ 藤原遥香さん

1回目は山本紗衣さん、
2回目は海沼千明さん。
そして今回3回目は藤原遥香さん。
クリスについては
3回とも別のキャストで
ラッキーでした。

個人的な好みではありますが、
藤原遥香さんのクリス、
この3人の中では
一番好きかもしれません。

以前テレビで
藤原さんがクリスとして
紹介されているのを見た時は、
お顔立ちがクリス向きではないかもって
思っていたのですが、
実際に演じられているのを見て、
一番クリスとしてしっくりきました。
演技が上手いですね。
芸大卒のような
立派な歌声ではないかもしれませんが、
歌と演技がピッタリと一致していて、
セリフがとても自然です。

ミュージカルはそれが一番大切だと思います。
「クリスティーヌ」という人間が
どういう人格なのかちゃんと考えて、
一貫してクリスとして作品の中で
生きている感じ。

今回の演出変更で、
一番変わったのはクリスティーヌです。
これまでとは違い、
クリスの感情が豊かに表現され、
何を考えているのか
はっきりわかるクリスになりました。

その一方で、俳優の演じ方によっては、
あざとく見えてしまう瞬間もでてきたのですが、
クリスの気持ちをちゃんと前面に出しながらも
どんな時も、クリスの持つ純粋さや、
処女性みたいなものが

しっかりと保たれているのは、
藤原さんだけのような気がします。


海沼さんは華奢で美しく、
テクニックとして
歌も演技も素晴らしいのですが、
クリスとしては
ちょっと「やりすぎ」な感を否めなかったです。
ミュージック・オブ・ザ・ナイトの時なんて
”酔い過ぎ””悶え過ぎ”で、
見ているこっちが
ちょっと引きました。
クリスの方がやる気満々で、
そのまま怪人を
ベッドに誘ってもおかしくないくらいの
勢いを感じました。
「うわぁ、この人、夜が激しそう」
みたいなイメージが
頭をよぎってしまうほど。

演出変更されて
ちゃんと主張するクリスになっても、
藤原さんは
不思議と終始可愛らしく、
純潔で、
守りたくなるクリスなのです。
そんなクリスだからこそ、
クリスを愛し守りきろうとする
ラウルの岸さんが
本当に素敵に見えました。
そして、
佐野ファントムの
クリスへの異常な執着も
より色濃いものに感じられました。

そんな藤原クリスだからこそ
♪醜さは顔にはないわ、
汚れは心の中よ♪
の歌詞がグサッと刺さります。
彼女が歌うと、
まったくイヤミがないですね。
本当にピュアな人が発するからこそ
胸に突き刺さる歌詞なんだなって
つくづく思いました。

ともかく藤原さんは、
役として作品の中で生きることを
とても大切にされている方だと
感じました。

藤原さんのおかげで
全体が上手く回っている印象です。


今後クリス以外の役でも
俳優として素敵な役に恵まれることを
期待して止みません。

ラウル 岸佳宏さん

今回の大阪公演
1回目が加藤迪さん、
2.3回目は岸佳宏さんでした。

ラウルという役は、
クリス役が誰かによって
アンドレ役・フィルマン役が誰かによっても
大きく印象が異なってくる役です。

岸さんについては
実年齢が39歳。
微妙な年齢ですね。
見た目も加藤迪さんと比較すると、
年齢なりの落ち着きがあります。
決して悪いことではありません。
ただ、
前回はアンドレ・フィルマンが
日浦×佐藤コンビの
とても若い支配人コンビで、
なおかつファントムが

これまたお若い清水大星さんだったので、
どうしても岸さんが

オッサンに見えてしまいました。
今回は安定の
増田×平良 熟年支配人コンビで、
ファントムは佐野さん。
そこに岸さんが入ると、
年齢も見た目も雰囲気も、
とてもいい感じに見えました。
身長のバランスもよかったです。

いろんな意味で
バランスって大切ですね。

クリスについては
前回は海沼×岸コンビで
海沼さんとは今ひとつ
噛み合わないなって思っていました。
「本当にクリスティーヌのこと好き?」
って聞きたくなりました。
クリスにも
「本当にラウルのこと好き?」
って聞きたくなりました。

今回の藤原×岸コンビの相性は抜群。
前回観た岸ラウルと
こんなに違うなんてびっくりです。
藤原クリスを愛する岸ラウル、
とっても良かったです。
頼れる素敵なラウルでした。
クリスとしっかり会話して、
彼女を大切にしているのが
ひしひしと伝わってきました。
だからこそ
クリスがラウルに心を開き、
ラウルを愛するようになる過程も
しっかりと感じられました。
オール・アイ・アスク・オブ・ユーで
何度か二人がキスをするシーンも
キュンときました。
本当に実生活でも恋人なのかしらって
思ってしまうくらい。
このシーンはこうでなくっちゃ!!!
ですね。

ラウルという役は、その昔、
山口祐一郎さんを
四季のスターダムにのし上げた役です。
演者によっては
女性から大きな人気を得られる
非常にお得な役どころですが、
実際は、
長身でハンサムで
歌が上手いからといって、
人気が出るわけでもないようです。
キャスティングされた俳優さんには、
女性人気を掻っ攫う勢いで
頑張ってほしいですね。
そのためには、
クリスを心から愛して愛して
愛しまくってください。

そのひたむきな姿にきっと、
女性ファンは心を奪われるのです。

そのほかのキャスト

今回新鮮だったのは
メグ・ジリーの石橋杏実さん。
パリのアメリカ人で
主役に抜擢されていらっしゃいましたが、
京都公演のチケットを取ったものの、
コロナの影響で中止になって
パリアメは観られずじまい。
メグ・ジリー役で
初めて拝見しましたが、
うーん、
特別なものは感じなかったです。
お顔立ちがキレイ、
という声もありますが、
かなり大づくりなお顔立ちなので、
2列目で観ると、
口の大きさや
目の離れ具合などが
目立ちます。
遠目で見た方が
キレイなお顔かもしれません。
若い頃の青山弥生メグに
少し見た目が似てるかも。
歌唱が不安定だなって思う瞬間が
何度かありました。
大人っぽいメグです。

マダム・ジリーの秋元みな子さん
メグの時代から見ているので、
マダムで見るのは本当に感慨深いです。
たしかもう還暦位のご年齢ですよね。
若い頃は、
とても可愛らしい方でしたが、
今ではすっかり大ベテランで、
マダムですか……。
劇団四季からしばらくは
離れていらっしゃいましたが、
その間もずっと舞台俳優を
続けていらっしゃり、
マンマ・ミーアのロージーで
久しぶりに拝見したときは、
とても嬉しかったです。
こうしてまた劇団四季で、
年齢を重ねた彼女のお芝居を
その年齢に応じた違う役で
見ることができるのは、
とてもうれしく思います。
これからも俳優さんとして、
いろんな役を演じていただきたいです。
ずっと続けるってすごいなーって、
思います。

まとめ

我々が3回観た大阪公演の中では、
今回が一番、
チームとしてまとまっていて、
キャストのバランスが
非常に良いという印象を受けました。

オペラ座の怪人、
本当におもしろい作品です。
今回の演出で、まさに
”何度観ても飽きないミュージカル”に
生まれ変わったと言っても
過言ではありません。

「演者の個性が生かす」演出というのは
劇団四季があまり得意としないところですが、
やはり芝居の面白さはそこにあります。
海外版の完全なるコピーでも、
作品がしっかりしていれば、
観客はある程度感動します。
でも、本来の作品を逸脱しない範囲で
演者の個性や解釈が加味されるのは
悪いことではなく、
それを見るのが、
観客として、リピーターとして、
楽しかったりするわけです。
同じ位のスケールの作品を抱えていても、
その点で劇団四季は、
東宝に負けてしまうなって
感じることもよくありました。
でもこのオペラ座の怪人の
演出変更をきっかけに、
劇団四季も少しずつ
変わっていったらいいのになって思います。
スター俳優が存在しない今の劇団四季。
いろんな俳優さんが切磋琢磨して、
いい作品・飽きない作品を、
作ってほしいと感じました。

大阪公演千秋楽は8月です。
それまでにもう1回行きたいと思っています。

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